当工房が大切にしていること 手紡ぎ・手織りの工房なので、工場で作られるようなそつがなく規格通りの整った製品は作れません。ですが、手作り=粗雑ではなく、ていねいな仕事をすることで、繊細で美しいと感じられるものを作っていきたいと思います。 伝統工芸の職人技に憧れはあるものの、反復による習熟だけでなく、新しい素材・技法にも挑戦し、ここでしか作れないものを生み出していくのが夢です。 紡ぐ(つむぐ) 羊毛は、羊の種類によって柔らかさやモチモチ感が違うので、作るものによって1種類を選択したり、ミックスしたり。 手紡ぎ糸は、ポコポコした感じがナチュラルな半面、組織織りには、はっきりした色のしっかりしたストレートヤーンが向いているので、色糸を購入することもあります。 素材として、綿を栽培している方から綿花を分けてもらったり、天蚕の生糸にならないキビソ、ビスと呼ばれる部分を手でほぐして綿状にしたものがあったり。トウモロコシの皮、大麦の茎…面白い素材を入手できるのは安曇野ならでは。近くで羊を育てたり、苧麻(カラムシ)を栽培している方たちもいます。なかなか作品に応用するまではいってませんが… ちなみに、安曇野周辺には麻績(おみ)、美麻(みあさ)など、昔は麻の産地だったことがわかる地名が多いです。天蚕以外にも特産品ができそうですね。 染める(そめる) 羊毛、絹などの動物繊維は、今はなかなか入手できなくなったイルガランという染料で染めています。深みのある色になります。綿・麻などの植物繊維はシリアス染料。繊維から染める場合もありますが、多くは糸染め。 工房の周囲には、栗、柿など、染料の材料になる植物がたくさん植わっています。柿渋をつくったり、畑で育てた藍で生葉染めをしたりもしてます。草木染の糸は、褪色を考えて1年くらい寝かして使うので、長い時間が必要ですし、欲しい色が出るとは限りません。 しかし、草木染ならではの色合いは探求しがいがあり、せっかく自然豊かな土地に住んでいるわけですから、徐々に草木染の割合を増やしていこうと思っています。 織る(おる) 平織は素材を活かす織り方だと思います。綾織は織物の王道。 欧米の複雑な組織織りが大好きですが、手動レバーの八枚綜絖だと時間がかかりすぎるので、もっぱらろくろ式の四枚綜絖の高機で織っています。 やってみたい織り方と、作りたい作品・素材にギャップがあることがしばしば。それをどう克服、折衷させるかを考えるのが、また面白いところでもあります。 紡いでみたい糸、使ってみたい糸、染めてみたい染料、織ってみたい組織。人生は短いのに、選択幅が広すぎて困ってしまうほどです。 一方、同じ織り方、素材で何度も織ると上達もします。何事もバランスが必要ですね。